起業事例インタビュー#3 故郷・三井野原への想い|高原そば壱心を開業した20代店長

エピソード3・・・高原そば 『壱心』田尾 海星さん

日本三大そばの一つ「出雲そば」の聖地として知られるこの町で、若き職人が一人、自らの店を構えています。

奥出雲の中でも標高の高い三井野原で営む「高原そば 壱心」。
店主の田尾さんは、27歳という若さで蕎麦屋を開業し、もうすぐ3年を迎えようとしています。

今回はそんな若き起業家の、地元に対する想いや開業への覚悟について伺いました。

起業のきっかけ

—田尾さんは、いつから「蕎麦屋」をやろうと考えていたのですか?

最初は全く考えていませんでした。高校を卒業して入社した会社を半年で辞めて、その後は出雲でアルバイトをしながらこれからのことを考えていました。

「このままじゃいけんな」という思いもあり、実家がある奥出雲に帰ってきました。実家が農家だったので農業も考えましたが、正直、それだけでは先行きに不安も抱えて決断しきれない状態でした。

そんな時、たまたま奥出雲にある「山県そば」を食べに行きました。それまでは麺といえば完全にラーメン派でしたが、初めて食べた手打ち蕎麦が本当に美味しくて。地元にこんな美味しい蕎麦があったのかと感動したのを今でも覚えています。

そこで山形そばの大将から「働いてみるか」と言われたのが、すべてのはじまりでした 。

職人の道にはまった「研究者」の気質

—実際に修行を始めてみて、どうでしたか?

最初は「自分でもできそうだな」なんて思ってたんですけど、実際にやってみたら全然そんなことなくて。粉と水をこねて、伸ばして、切る。このシンプルな工程が、ものすごく難しいことだとわかりました。

うまくいかないことが続きましたが、練習を重ねて、少しずつお客さんに出せる蕎麦が打てるようになりました。初めて自分が打った蕎麦を、客席でお客さんが美味しそうな顔で食べてるのを見た時は、本当に嬉しかったです。

—何が田尾さんの性に合っていたのでしょうか。

僕は中学・高校と陸上をやっていて、どうすれば速くなれるか動画を撮って研究したりするのが好きでした。蕎麦も同じで、気温や湿度で毎日仕上がりが違う。それを自分の勘を頼りに日々調整して試行錯誤する毎日です。研究を重ねて上手にできた時の達成感がたまらなく、自分の性格と蕎麦打ちははまったのだろうと思います。

奥出雲に来たからには、美味しい蕎麦を食べてもらい、奥出雲いいな、そう思ってもらえるように心を込めて打っています。

開業の決意:寂れる地元への危機感

—修行を7年ほどされた後に、独立を考えたきっかけは何でしたか?

自分が生まれ育った三井野原が、どんどん寂れているなと感じていたことですね。子どもの頃は人がたくさん来て賑わっていたスキー場が次々に廃止になり、奥出雲観光でも人気だったトロッコ列車もなくなって、まちには明るい話題が全くありませんでした。

せっかく父親が使っていたいい建物(野菜の直売所やドライブインの食事処)があるのに、活かせていないのももったいないなと思っていました。自分がお店をやることで、少しでもこの町に人が来てくれる場所ができ、若いもんが頑張っている姿が町を少しでも元気にするきっかけになればいいなと思い、開業を決めました。

—「壱心」という店名にはどんな想いがありますか?

名前の由来を調べたら「物事の始まり」という意味がありました。新たに始める、という決意の「壱」と、真心込めた蕎麦を出す「心」を合わせました。

厳しい言葉が「覚悟」へ

—開業してすぐは、苦労も多かったのではないでしょうか?

メニュー設定や資金繰り、もう本当に、全部が大変でした。特に印象に残っているのが、オープン直後に山県そばの頃から知っている蕎麦通のお客さんに「もう一回勉強し直しなさい。なんでこんなにまずいのか」って言われたことですね 。

その時は、めちゃくちゃ腹が立ちましたよ(笑) 。

でも落ち着いて考えたら、店主としていろんなことに追われて、蕎麦打ちが「ざまく(雑)」になっていた自分に気づきました。お客さんの声は、正しい。

一から見直して、壱心として自信を持って出せる蕎麦を追求しました。厳しい言葉をしっかり伝えてくださったお客様が次に来ていただいた時には「これだ」と言ってもらえました。あの言葉があったから、今は「適当な蕎麦は絶対に出さない」と背筋が伸びる思いでやれています。厳しい声も応援あってこそですし、感謝しかありませんね。

最後に

—最後に、これから何かを始めたい若者へメッセージをお願いします。

シンプルに「やってみないとわからんじゃん」ってことですかね。ダメだったら勉強すればいいし、それも一つの経験になります。何事もチャレンジです。

友人としても仲良くさせていただいてる田尾くんの地元への想いには胸が熱くなりました。

これから一緒に盛り上げていきましょう!

ぜひ「壱心」へお蕎麦を食べに行ってみてくださいね。

高原そば『壱心』公式インスタグラム

https://www.instagram.com/kogen_sobaissin

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